2025年度(令和7年度)決算から学校法人では「セグメント情報」の注記が義務化されます。その背景と対応ポイントについては前回記事「学校法人に求められる新たな財務情報開示 ― セグメント情報導入の背景と対応ポイント」で触れた通りです。今回は配分基準の整備についての考え方を解説します。
セグメント情報の注記の前提として不可欠なのが「配分基準」の整備です。配分基準とは、複数セグメントに共通する収支を各セグメントに合理的・客観的に按分するためのルールです。
このような制度変更に伴う新たなルールの整備を、単なる経理実務の延長と捉えるのは適切ではありません。配分基準の内容は、結果として部門別収支に影響を与えるものであり、理事会・評議員会等における政策判断や資源配分、組織再編の前提資料となり得ます。見方を変えれば、配分基準の設定は経営情報の信頼性を支えるインフラであり、経営判断の根拠を補強する位置づけともなります。
令和7・8年度は新旧いずれの基準も選択可能な移行期間ですが、令和9年度からの本格適用を見据え、早期に試算・検証を始めることが推奨されます。例えば、両基準による収支比較やシステム上の対応可否などを確認し、業務負荷とのバランスを検討することが現実的です。
経営層にとって重要なことは、この制度対応を「経理部門の課題」と矮小化せず、「経営判断の根拠を支える仕組み」として戦略的に位置づけることです。配分基準の策定・承認、関連部門との調整、毎年の見直し主導といったプロセスに関与することが、健全な財務ガバナンスの確立につながります。セグメント情報は、経営資源の再配分や事業構造の再設計、理事会・評議員会での施策検討の土台となります。制度対応が目的化することなく、財務情報の質を高め、法人全体の持続的な健全性の確保に資するものとなるよう、責任ある関与が期待されます。
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