2025年1月28日

2024年の医療機関・介護事業者の倒産状況等

医療機関や介護施設・事業所等の厳しい経営状況が取り沙汰されています。今回は令和6(2024)年の医療機関や介護事業者の倒産や休業・廃業・解散(以下「休廃業等」と言います。)の状況について、信用調査会社の調査結果等からご説明します。

医療機関の倒産、休廃業等の動向

帝国データバンクの「医療機関の倒産・休廃業解散動向調査(2024年)」によれば、2024年の医療機関(病院・診療所・歯科医院を経営する事業者)の倒産(法的整理、負債1000万円以上)は64件となり、平成21(2009)年の52件を大きく上回って過去最多を更新しました。
業態別では「病院」が6件、「一般診療所」が31件、「歯科診療所」が27件で、「一般診療所」と「歯科診療所」が過去最多を更新して全体の件数を押し上げています。近年の動向は、コロナ禍前の令和元(2019)年には過去3番目となる45件の倒産が発生しましたが、翌令和2(2000)年にはコロナ禍での事業者支援などを背景に27件に減少。しかし、令和3(2021)年から増加に転じ、令和4(2022)年、5(2023)年はともに41件と、2年連続で40件を超えました。
負債総額は282億4,200万円で、前年(253億7,200万円)から11.3%増加し、平成12(2000)年以降の25年間で5番目に高い水準となりました。
2024年に休廃業等が判明した医療機関は722件となり、前年の620件を上回って過去最多を更新しました。10年前の2014年と比べて2.1倍、20年前(2004年)と比べると5.6倍に増えています。

介護事業者の倒産、休廃業等の動向

東京商工リサーチの調査によれば、2024年の介護事業者(老人福祉・介護事業)の倒産は、これまで最多だった2022年の143件を29件上回って過去最多の172件に達しました。ヘルパー不足や集合住宅型との競合、さらには基本報酬のマイナス改定などが影響した訪問介護が過去最多の81件、多様化したニーズに対応できなかった通所介護(デイサービス)も過去2番目の56件、有料老人ホームも過去最多の18件と、いずれも増加しました。
負債総額も229億1,000万円と、前年の102億3,100万円を大きく上回り、それまで最高だった2022年の221億3,800万円を超えて過去最高となりました。
2024年の介護事業者の休廃業等は、最多を更新する612件(前年比20.0%増)に達し、倒産と休廃業等を合わせて784件(同24.0%増)にのぼりました。
休廃業等を業態別にみると、訪問介護448件(同24.4%増)、通所・短期入所70件(同5.4%減)、有料老人ホーム25件(同92.3%増)、その他69件(同9.5%増)で、7割以上(73.2%)を訪問介護が占めています。

倒産、休廃業等の増加の要因

コロナ禍においては、医療機関や介護事業所等に対する種々の支援がありましたがそれらが打ち切られる一方で、利用率が思ったようには戻らない業態もあります。加えてウクライナ戦争や経済回復によるエネルギー資源その他の物価高騰、少子高齢化等に起因する人材確保難による人件費の高騰などにより、事業収益、事業利益が圧迫されています。
さらに、経営者の深刻な高齢化や後継者の不在があります。経営者が死亡、引退した時に事業を引き継ぐ体制が整っていない事業体が多くあります。これは一般診療所で特に顕著ですが、その他の業態でも発生する問題です。
地域における需給を見極め、自身の事業体の立ち位置を明確にするなど、事業継続できるだけの組織体制・財務体質を構築し、組織内外に対応できる後継者を育成することが必要だと考えます。

本ページの掲載内容は当法人が発行する「気まぐれ通信」2025年1月号の内容と同一です。

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