近年、AIの発展は目覚ましいものの、「具体的にどのように業務に活かせばいいか分からない」という声も多く聞かれます。そこで今回は、AIの具体的な活用例として「経営分析」をテーマとした事例をご紹介します。
GoogleのGeminiを活用し、財務・会計の専門的な視点を組み込んだ独自の分析プロンプト(指示書)をご用意しました。これまで熟練のコンサルタントが時間をかけて行っていた財務諸表の深掘り分析を、AIのスピードと専門家の視点を掛け合わせることで、「経営の急所」として可視化します。
独自AIが導き出す「経営分析レポート」(Step1:法人単位分析)
本ツールは、Geminiのカスタマイズ機能である「Gem」を活用して構築しています。Gemとは、AIに対する役割や指示、回答ルールを事前に固定できる機能です。これにより、利用のたびに設定を入力する手間なく、一貫した専門家水準の分析が可能になります。
本Gemには、社会福祉法人の経営分析に特化したプロンプトに加え、以下の専門データをあらかじめ読み込ませています。
- 日本公認会計士協会「社会福祉法人の経営指標(研究報告第27号)」の経営指標
- 独立行政法人福祉医療機構(WAM)「2024年度 社会福祉法人の経営状態の推移(全国平均)」
【ご利用方法】
以下のURLにアクセスの上、法人単位の「財務三表(第一様式)」「注記」「現況報告書」をアップロードしてください。法人全体の「収益性」や「安全性」を、全国平均データ(WAM)と比較し判定します。
▶ 今回使用した「分析元データ(サンプル)」のダウンロードはこちら
(※以下はサンプル法人の診断結果の要約です。フルバージョンの詳細な分析レポートは、上のPDFよりご確認いただけます。)
【経営指標分析結果(抜粋)】
| 診断指標 | 結果(当期値) | 分析ツールの評価(AI×経営分析) |
| サービス活動増減差額率 | 5.14% | 優良:全国平均(1.55%)を大きく上回り、本業の収益性が非常に高い状態です。 |
| 債務償還年数 | 11.89年 | 懸念:全国平均(5.0年)の2倍以上。収益力は高いものの、借入負担が重く、完済までに長期間を要します。 |
| 人件費比率 | 62.37% | 良好:全国平均(66.9%)より低く抑えられており、効率的な人員配置がなされています。 |
| 正味金融資産額 | 8.6億円 | 安定:現預金等の流動性は潤沢。前期より約1億円増加しており、当面の資金繰りに不安はありません。 |
数値の先にある「経営者への問いかけ」
当ツールの最大の特徴は、分析の最後に提示される「経営者への深掘り質問」です。単なる批判ではなく、未来を変えるための対話を促します。
- 「事務費比率(14.49%)が平均より高い要因は、高収益を支える本部機能の維持費として妥当か?」
- 「金利上昇局面において、56億円の借入利息負担増にどう備えるか?」
- 「次なる設備更新に向けた内部留保の積み立ては計画通りか?」
AIによる客観的な「型」の分析と深掘りの問いかけを掛け合わせることで、経営陣が優先して話し合うべき「次なる課題」の輪郭が浮かび上がります。
本ツールをご利用いただく際の留意点(重要)
AI技術を活用した迅速な分析には多くのメリットがありますが、以下の点にご留意いただく必要があります 。
- AIモデル(Geminiの種類)による精度の差
利用するGeminiのモデルによって、分析の精度や考察の深さが変動します。上位モデル(Gemini 1.5 Pro / 2.0等)は、複雑な財務上の因果関係を読み解く高い推論能力を持ちますが、モデルの種類によっては論理的整合性や数値の解釈に差が出る場合があります。また、Geminiの処理が遅延する場合などは回答されない場合もあります。そのような場合は時間を置いて再度お試し下さい。 - 算定精度の限界
AIは極めて高い処理能力を持っていますが、計算過程において誤り(ハルシネーション)が生じる可能性がゼロではありません。最終的な経営判断に際しては、数値の正確性を専門家と共に確認することをお勧めします。 - OCR(文字認識)の制約
紙資料をスキャンした画像やPDFデータ(テキストデータ化されていないPDF)を用いる場合、OCRの精度によっては数値を誤認したり、桁数を見落としたりすることで、正確な分析結果が出ない場合があります。精度の高い分析のためには、Excel等、数値がデジタルであるデータを用いた解析が推奨されます。
さらなる深堀りについて
本ツール(Step1)は法人全体の俯瞰に特化していますが、当法人では現在、本ツールを入り口としたさらに高度なAI分析ソリューション(Step2・Step3)の開発を進めております。
- Step1:法人単位分析(※今回無料公開したツールです)
法人全体の財務状況を俯瞰し、強みとリスクを明確化します。 - Step2:事業区分別・分析対象拠点抽出(※現在開発中)
事業区分別の財務三表(第三様式)を解析。多くの拠点を抱える法人でも、「どの拠点を優先的に改善すべきか」を自動でスクリーニングします。 - Step3:特定拠点詳細分析・改善シナリオ策定(※現在開発中)
Step2で抽出した問題拠点について深掘りし、現場レベルで実行可能な「経営改善シナリオ」をAIと専門家の知見を交えて策定します。
