会計監査人の選定・見直し実務と監査法人比較のポイント
会計監査人の選定・見直し実務と監査法人比較のポイント
非営利法人・社会福祉法人にとって、会計監査人の選定は単なる「法定手続の履行」にとどまりません。法人運営の質や現場の負担、さらには将来の経営改善にも直結する重要な経営判断といえます。
どの会計監査人を選ぶかによって、決算期の業務負担、実務的なサポート体制、担当者との継続的な関係性、費用の透明性などが大きく変わってきます。特に、非営利法人特有の会計制度に関する理解度は、監査の質のみならず、現場の安心感をも左右する重要な要素となります。本ページでは、会計監査人の規模別の特徴を比較するとともに、新規選定・交代(見直し)時の実務フローをご紹介します。
第1章:会計監査人の種類と特徴
会計監査人を選定する際には、監査法人または個人の公認会計士のいずれかを選ぶことになります。個人の場合は担当者の資質や経験に依存する面が大きいため、組織的な品質管理や継続的な組織体制を重視する場合には監査法人を選択するケースが一般的です。
1-1. 主な選択肢の概要
- 大手監査法人:全国展開する組織力と高度な品質管理体制を有し、上場企業や大企業の監査を中心に手がけています。非営利法人の監査は、主に非営利法人部門が担当しますが、当該部門の設置状況や体制は拠点によって異なる場合があります。
- 中小監査法人:数十名から数百名規模の組織で、地域の中堅企業や非営利法人など幅広く対応しますが、小さい法人では非営利法人を専門とする部門を設けていないケースも多く、担当者個人の経験に依存する側面があります。
- 非営利法人特化型監査法人:非営利法人監査に特化した専門組織です。非営利法人会計の実務経験者が多く、制度への深い理解と実務支援に強みを持ちます。
1-2. 会計監査人(監査法人)タイプ別の特徴比較
| 視点 | 大手監査法人 | 中小監査法人 | 非営利法人特化型監査法人 |
|---|---|---|---|
| 専門性 | 非営利法人部門が担当することが多い | 専門部門の有無や担当者の経験に依存 | 非営利法人に特化 専門性が高い |
| 監査チーム体制 | ジョブローテーションにより担当の交代が前提。同じ説明が必要となることが少なくない | 担当者によって異なることが多い | 専門チームが継続して担当 |
| 監査日程と現場負担 | 決算期末時期(4〜5月)に集中しやすく、上場企業等の対応が優先されることがある | 法人方針に左右されるが、大手監査法人と同様の傾向がある | 専門チームが担当するため、期中に分散して現場負担を軽減することが多い |
| 監査対応と現場負担 | 上場企業並みの監査手続を実施するため負担が大きい | 上場会社監査事務所では大手監査法人と同様の水準が求められる | 可能な限り業務の効率化を図りつつ、現場の負担を軽減 |
| 指導的機能 | 批判的機能を徹底し、指導的機能は自己監査に繋がることから禁止されることが多い | 大手監査法人と同様の傾向があり批判的機能が重視されることが多い | 批判的機能だけでなく、指導的機能も発揮しやすい(指導監査、予算編成、事務効率化対応等) |
| 報酬体系の特徴 | 基本報酬に加え、時間延長・オプション・コンサル等が加算される場合がある | 比較的明確だが指導的機能に関して追加されることがある | 基本報酬内で柔軟に対応することが多い |
| 信頼性・実務経験 | 世間認知が高くブランド力がある。実務経験は担当チームによる | 大手監査法人ほどではないが世間認知が比較的高い | 非営利法人の監査経験が豊富であり、実務経験豊富である |
※監査人の選定においては、自法人との適合性を軸に比較することも重要です。選定理由は「専門性」「組織体制」「報酬妥当性」「自法人との適合性」という観点で整理すると説明責任が果たされやすくなります。
第2章:監査人交代の実務
近年、社会福祉法人では公募による会計監査人の選定や、体制見直しに伴う監査人の交代が行われるケースも見られます。監査人の新規選定や交代は、計画的に進める必要があります。ここでは、社会福祉法人の場合の会計監査人の交代について解説いたします。なお、会計監査人の新規選定の具体的な留意点・進め方については、解説ページ(社会福祉法人の会計監査人制度・監査人選任の全体像)をご参照ください。また、これから特定社会福祉法人となることが見込まれる方は特定社会福祉法人への移行準備と監査法人・会計監査人選任について解説したこちらのページも合わせてご覧下さい。
2-1. スケジュール例
| 時期 | 主なアクション |
| 12月~1月 | 現状分析・要件整理(現在の課題と新監査人に求める条件の明確化) |
| 2月~3月 | 候補選定・提案依頼(RFP送付)・予備調査(ショートレビュー) |
| 5月 | 監事の過半数による議案決定/理事会決議(評議員会提出議案の決定) |
| 5月~6月中旬 | 監査人引継手続き開始(監査人への通知・質問書送付・調書閲覧) |
| 6月下旬 | 定時評議員会決議・新監査人との契約締結 |
2-2. 会計監査人(監査法人)候補選定のステップ
会計監査人(監査法人)候補者は、透明性と専門性を確保するため、以下のステップで選定を進めることが推奨されます。
- STEP1 選定基準の作成:報酬額のみで判断するのではなく、非営利法人会計への専門性・担当体制・サポート内容などの評価項目を整理し、あらかじめ配点を設定する。
- STEP2 複数候補への提案依頼:複数の監査法人にRFP(提案依頼書)を送付し、見積もりを取得する。
- STEP3 選定委員会等による審査(任意):透明性確保のため、選定委員会等による客観的な審査を推奨します。
- STEP4 予備調査(ショートレビュー)の実施:候補の対応力・専門性・現場との相性を確認する。
2-3. 法定手続きのポイント
社会福祉法人の場合は、社会福祉法および一般社団法人法に基づき、以下の手順を確実に実施する必要があります。
- 監事による決定: 会計監査人の選任等に関する議案の内容は監事の過半数をもって決定(社会福祉法第43条第3項において準用する一般法人法第73条第1項)
- 理事会決議: 定時評議員会に提出する議案として「会計監査人選任の件」を理事会で決議
- 評議員会決議: 定時評議員会において、会計監査人の選任を決議(社会福祉法第43条第1項)
- 報酬の決定について:会計監査人の報酬等は、監事の過半数の同意を得て、理事会又は委任を受けた理事が定める(社会福祉法第45条の19第6項において準用する一般法人法第110条)。
2-4. 会計監査人同士の引継ぎ手続き
監査人の交代時には、監査基準報告書900「監査人の交代」に基づき、以下のような引継ぎ手続きが必要となります。
- 通知書の発送:法人が「監査人予定者の指定に関する通知書」(監査基準報告書900付録1)を作成し、前任・後任監査人双方に送付します。
- 守秘義務の確認:後任監査人(監査人予定者)と法人間で、「守秘義務に関する確認書」(監査基準報告書900付録2)を取り交わします。
- 監査調書の閲覧:期首残高の妥当性を確認するため、前任監査人の監査調書を閲覧します。これに際し「監査調書の閲覧に伴う守秘義務に関する承諾書」(付録3)を提出します。
- 質問書の送付:後任監査人から前任監査人へ、経営者の誠実性や交代事由に関する見解など、重要事項について質問を行います。
- 前任監査人と後任監査人の日程調整のうえ、前任監査人の監査調書を閲覧する等の引継ぎ手続きを行います。
終わりに ― 監査法人ユウワット会計社のご紹介
監査法人ユウワット会計社は、非営利法人に特化した監査法人です。
社会福祉法人経営実務マイスターや指導監査経験者等、非営利法人・社会福祉法人特有の制度や実務を深く理解したスタッフによる専門チーム体制を構築し、監査及びアドバイスを実施しています。
監査先が使用するあらゆる財務ソフトに対応し、期末監査前に会計データの分析・検証を実施することにより、決算期の往査を最少化する期中分散型の監査設計を可能としています。また、専門チームが継続して監査に当たるため、監査対応に伴う実務負担の軽減につながります。日本国内であれば全国対応が可能で、交通費等が報酬に影響することはありません。
会計監査人の選定・交代をご検討の際には、専門性と実務支援体制の観点からも比較検討されることをお勧めいたします。
法人内部での検討のために本ページの内容をPDFにまとめた書面をこちらからダウンロードして頂けます。
※本書面の内容は2026年3月1日現在の法令・制度に基づいています。最新の情報は所轄庁または専門家にご確認ください。
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