社会福祉法人や医療法人に向けたクラウドファンディング解説の第2回をお届けいたします。第1回ではクラウドファンディングが法人にもたらす可能性や組織的メリットをご紹介しましたが、今回は「具体的にどう設計・実行するか」という実践面にフォーカスしてご説明いたします。
1.共感を生むストーリーの原則
支援者の関心を引き寄せるのは「資金不足」という現状ではなく、プロジェクトが実現した先にある「変化」です。「このプロジェクトによって、地域の誰がどのように変わるのか」という未来像を、画像や動画を交えて具体的に描くことが、支援者の共感を引き出すための核心となります。「窮状への訴え」ではなく「未来への展望」を語ることが基本原則です。
「データ」と「感情」を組み合わせて訴求することも効果的です。聖隷浜松病院の救急車の例では「累計搬送件数8,900件超、車体は走行距離15万km超、修理回数41回」といった客観的データと、「老朽化した救急車が動かなくなれば、その瞬間から助けられる赤ちゃんを助けられなくなる」という感情的訴求を組み合わせて記載されていました。
2.成否を分ける「初動5日間」の戦略
公開後5日間で目標額の20%以上を達成することが、クラウドファンディング成功の重要な指標とされています。初期の勢いが、参加が参加を呼ぶ「バンドワゴン効果」を生み出し、それ以降の支援拡大につながる可能性が高いからです。このためには、公開前からの「事前支援者の確保(プレコミットメント)」が重要なポイントとなります。既存ネットワークへの周知と協力者への事前打診を公開の2~4週間前から計画的に進めることが鍵となります。
過去に寄附を受け付けた実績のある個人・法人を一覧化し、個別の告知を行うことや、取引業者等に対し事前説明、協力を依頼(支援が社会貢献となり、ひいては会社の価値向上につながるといった訴求)することも有効と考えられます。公開直前期(3~4日前)には、法人公式ウェブサイトやSNSでの発信、プレスリリースの発信などによって露出機会を増やすことも重要です。
3.支援者との関係を深める「リターン設計」
社会福祉法人や医療法人のクラウドファンディングにおいては、高額な物品よりも「活動の意義を体感できるリターン」が支持される傾向にあります。御礼メール・手書きメッセージ・活動報告PDF等のサンクス・リターン、施設内への芳名掲示等のネーミング・ライツ、障害者就労支援製品等の成果物ギフト、施設見学会・オンライン報告会への招待といった体験型リターンが代表的な類型です。
また、社会福祉法人の最大の優位性として「寄附金控除」の活用があります。税額控除により1万円の寄附が実質6,800円の負担(最大40%控除の場合)となること(※1)を明示するだけで、支援のハードルが大きく低下します。(ただし、社会福祉法人が税額控除対象法人として認定されていることが必要です。また、個人から社会医療法人への寄附は所得控除の対象外です。)
(※1)寄附額:10,000円 の場合の税額控除額
(10,000円 − 2,000円)×40%=3,200円
⇒実質負担:10,000円 − 3,200円 = 6,800円
(個別の条件により控除額は異なります)
4.経営層が把握しておくべきリスク管理
クラウドファンディングには大きな可能性がある一方、準備不足等により運用を誤ると法人の社会的信頼を損なうリスクとなるケースもあります。ここでは失敗してしまう代表的な3つのケースを説明します。
① プロモーション不足による支援伸び悩み
プラットフォームへの掲載のみでは支援は集まりません。SNSや既存ネットワークへの周知を怠った結果、支援者数が数名にとどまるケースが散見されます。
② 内部視点に偏った企画立案
法人内部にとっての重要テーマであっても、外部の共感を得にくい内容では支援の広がりが見込めません。「共感を生むストーリーの原則」でご説明したように、支援者からどう見えるか、どう感じられるかという視点からプロジェクトの価値を再設計することが不可欠です。
③ 透明性の欠如による信頼毀損
資金使途の(不明確な)変更やリターンの発送遅延は、法人の信用に深刻な影響を及ぼします。消費者庁の委託調査「クラウドファンディング(購入型)の動向整理」(2020年9月30日、三菱UFJリサーチ&コンサルティング実施)によれば、CF支援経験者520人を対象にWebアンケートを行った結果、トラブル経験者(全体の26.3%)のうち最も多い内容が「リターンの提供時期が遅れた」で42.3%でした。誠実かつ迅速な運用管理が求められます。
5.貴法人に最適なプラットフォームの選定
クラウドファンディングを実施するプラットフォームの選択も慎重に検討する必要があります。手数料の多寡のみを基準とした選定は適切ではありません。クラウドファンディングの手数料は一般的に調達金額の10~20%程度が相場であり、手数料水準とサポート体制の充実度はおおむね比例する傾向にあります。法人の属性・事業内容・ターゲット層に合ったプラットフォームを選ぶことが成否の鍵となります。
| プラットフォーム | タイプ | 手数料(目安) | 特徴・適性 |
|---|---|---|---|
| READYFOR (https://readyfor.jp/) | 購入型・寄附型 | ベーシック:14%+税 サポートプラン:要相談 | 福祉・社会貢献案件に強み。専任キュレーターによる伴走支援が充実。初めての法人に特に適している |
| CAMPFIRE for Social Good (https://camp-fire.jp/forsocialgood/readyfor) | 寄附型 | 起案者負担:0% (支援者が12%+税の 協力費を負担) | 社会課題解決プロジェクト専門。起案者の費用負担なし。担当者の伴走支援あり。非営利活動団体限定 |
| For Good (https://for-good.net/) | 購入型・寄附型 | 起案者負担:0% (支援者が200円+ 決済手数料5%を負担) | 掲載手数料0円。資金を最大限事業に投入したい場合に有効。ソーシャルグッド特化 |
| CAMPFIRE (通常) (https://camp-fire.jp/) | 購入型 | 17%+税 | 国内最大規模の拡散力。若年層・広域からの支援獲得に適している。オールジャンル対応 |
なお、手数料0%のプラットフォームは支援者側がシステム利用料を一部負担する仕組みのため、ターゲット層の特性を踏まえたうえでご検討ください。また、目標未達の場合に全額返金となるAll-or-Nothing方式と、集まった金額を受領できるAll-in方式の違いも重要な選定ポイントです。プロジェクトの確実な実施が求められるケースが多い社会福祉法人であれば、All-in方式を採用できるプラットフォームを選択することが望ましいと言えるでしょう。今回ご紹介した4つのプラットフォームのうち、For GoodはAll-in方式のみ、その他の3つは両方式採用しています。
案件選定チェックリスト及び個別事例分析
当法人の監査先・会計顧問先の皆様には、理事会・幹部会議での検討にそのまま利用可能な「案件選定チェックリスト」及び「個別事例の詳細分析」を専用ウェブサイトに掲載しています。「社会的意義・緊急性は十分か」「資金使途は具体的か」「広報計画は整っているか」等の確認項目を、理事会や幹部会議における意思決定の判断材料としてご活用ください。
クラウドファンディングは、社会福祉法人が「制度に依存する経営」から「地域と共に創る経営」へと意識を向けるための有効な手段の一つです。貴法人の新たな取り組みの端緒となれば幸いです。
