2024年9月28日

「こころの健康」について(厚生労働白書等から)

今年の厚生労働白書のテーマは「こころの健康と向き合い、健やかに暮らすことのできる社会に」とされ、初めて「こころの健康」がテーマとなりました。本格的な少子高齢化・人口減少による子育て・介護等と仕事との両立や、パンデミックや急速なデジタル化等に伴う孤独・孤立の深刻化など、現代社会におけるストレスは多様さを増しています。白書では、「こころの健康」を、「人生のストレスに対処しながら、自らの能力を発揮し、よく学び、よく働き、コミュニティにも貢献できるような、精神的に満たされた状態」と定義して、ストレスの実態を整理するとともに、今後の取組みの方向性を展望しています。

精神疾患を抱える患者数

白書によれば、精神疾患を抱える令和2(2020)年の総患者数は約615万⼈で、うち外来患者数は約586万⼈でした。外来患者の疾患別の内訳は、うつ病などの「気分(感情)障害」が約169万⼈、適応障害などの「神経症性障害、ストレス関連障害および⾝体表現性障害」が約124万⼈、「その他の精神および⾏動の障害」が約79万⼈などとされています。また年代別では「75歳以上」が約136万⼈で最も多く、「45-54歳」が約98万⼈、「0-24歳」が約79万⼈と続いています。このデータの元資料は厚生労働省が3年に1度実施している「患者調査」ですが、前回の平成29(2017)年の精神疾患を抱える外来患者数は約389万⼈でしたから、この3年間で197万人増加しています。

精神障害等の労災補償請求件数

厚生労働省では、過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患や、仕事による強いストレスが原因で発病した精神障害の状況について、労災請求件数や支給決定件数などを取りまとめています。参考資料の別表1はこのうち精神障害に関する事案の労災請求件数と支給決定件数を示したものですが、令和2年度に2,051件だった請求件数が、令和5年度には3,575件と、1.7倍超に急増しています。そして請求件数の多い業種を見ると、大分類では「医療、福祉」が1位を、中分類では「社会保険・社会福祉・介護事業」が1位、「医療業」が2位を、継続して占めています。一度だけこの順位に変化が有ったのは東日本大震災のあった年の平成23(2011)年度ですが、それでも「医療業」が1位「社会保険・社会福祉・介護事業」が2位で、大分類での「医療、福祉」が1位であることに変動はありませんでした。

自殺統計について

警察庁生活安全局が毎年取りまとめている「自殺の概要資料」によれば、平成10(1998)年から14年連続で3万人を超えていましたが、その後減少に転じて令和元(2019)年には2万169人となりました。直近の令和5年は2万1,837人となっています。自殺の原因・動機を見ると「健康問題」が1万2,403人と最多で、うち8,597人は年金・雇用保険等受給者などの無職者です。また自殺者数を職業別に見ると、有職者が8,858人、学生・生徒等が1,019人、無職者が11,466人、不詳が494人でした。有職者には医師・歯科医師・薬剤師が83人、看護師等が98人、その他の保健医療従事者が98人、社会福祉専門職業従事者が52人、介護サービス職業従事者が205人含まれています。

医療業や社会福祉・介護事業はともに国民の健康と生活を守る事業です。患者や利用者と真剣に向き合うからこそのストレスは多いでしょうが、組織として、また業界として、従事者の「こころの健康」を維持確保することも必要です。毎年10月10日は「メンタルヘルスデー」です。

本ページの掲載内容は当法人が発行する「気まぐれ通信」2024年9月号の内容と同一です。