2023年11月18日

介護事業経営実態調査の結果概要について

厚生労働省では各サービス施設・事業所の経営状況を把握し介護保険制度の改正及び介護報酬改定に必要な基礎資料を得ることを目的として、介護報酬改定後2年目に「介護事業経営概況調査」を、介護報酬改定後3年目、すなわち次期介護報酬改定の前年に「介護事業経営実態調査」を実施しています。今般「令和5年度介護事業経営実態調査」の結果が公表されたので、その概要をお知らせします。

調査の概要

この調査は、全ての介護保険サービスを対象として、層化無作為抽出法により抽出された3万3,177施設・事業所に対して令和4年度決算の内容を調査、1万6,008施設・事業所から回答を得ました(有効回答率48.3%)。

全サービスの税引前収支差率(コロナ関連補助金及び物価高騰対策関連補助金を含まない:以下単に「収支差率」というときはこれによります。)の平均値は2.4%で、前回の実態調査である令和2年度(決算年度は令和元年度)と同率ですが、昨年度実施された概況調査結果で見ると、前年度(令和3年度)から0.4ポイント悪化しています。なおコロナ関連補助金及び物価高騰対策関連補助金を含んだ税引前収支差率は今次(令和4年度)も前年度もともに3.0%です。

サービスごとの収支差率

サービスごとにみると施設系サービスの収支差率の落ち込みが目立ちます。介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)が前年度よりも2.2ポイント低下して▲1.0%、介護老人保健施設が2.6ポイント低下の▲1.1%で、これらは介護保険制度が始まって以降、初の赤字となりました。介護医療院の収支差率は0.4%とかろうじて黒字を維持したものの、対前年度4.8ポイントの低下と、最大の下げ幅となりました。

居宅サービスでは、前年度の収支差率が▲0.4%と最低だった訪問リハビリテーションが一転して9.1%と高い率となりました。次いで訪問介護が7.8%、訪問看護が5.9%と、訪問系サービスが総じて高い率を示しています。逆に通所介護が1.5%、通所リハビリテーションが1.8%と、通所系サービスは低率となっています。

地域密着型サービスでは、定期巡回・随時対応型訪問介護看護が11.0%と高率で、地域密着型介護老人福祉施設(地域密着型特養)は、上記の施設系サービスと同様に▲1.1%と、赤字となっています。

特別養護老人ホームの収支差率の詳細

特別養護老人ホームの収支差率を級地区分別にみると、黒字なのは3級地が1.8%、6級地と7級地がそれぞれ0.3%と、この3区分のみで、1級地は▲1.2%、2級地は▲2.3%、4級地は▲1.0%、5級地は▲0.9%、その他が▲2.1%でした。特に2級地とその他地域は、コロナ関連補助金及び物価高騰対策関連補助金を加えても赤字となっています。

また定員規模別にみると、30人定員が▲2.2%、31~50人は▲1.3%、51~80人は▲1.4%、81~100人は▲0.6%、101人以上は▲0.1%と、いずれの規模でも赤字でした。大規模になると赤字幅が小さくなっています。

まとめ

このように、介護施設・事業所の経営は、コロナ関連補助金及び物価高騰対策関連補助金を受給しても厳しい状況でした。コロナ感染症が5類に移行し、また物価も落ち着いてきたと認識されると、これらの補助金の廃止や見直しが行われることは止むを得ません。しかし、施設を安定して経営できるだけの介護報酬の改定がなされることを望みます。

本ページの掲載内容は当法人が発行する「気まぐれ通信」2023年11月号の内容と同一です。