独立行政法人福祉医療機構(WAM)では、債権管理の一環として、貸付先法人及び貸付対象の各施設の経営状況等について、事業報告に基づく調査・分析を行っています。今般、特別養護老人ホームと病院について、令和4年度(2022年度)の経営状況の速報値が公表されましたので、その概要についてご報告します。速報値なので、例年年明けに公表される「経営分析参考指標」の確報とは異なる場合も有ることにご注意ください。
特別養護老人ホーム
特養入所の利用率は、従来型で前年度より1.0ポイント低下して92.7%、ユニット型も0.6ポイント低下して93.2%と、ともに低下しました。短期入所の利用率は、従来型が2.3ポイント低下して77.4%、ユニット型は0.4ポイント上昇して77.7%となりました。新型コロナウイルス感染症(以下「コロナ」と言います。)の感染拡大前の令和元(2019)年度の特養入所の利用率は、従来型が94.0%、ユニット型が94.3%、短期入所の利用率は、従来型が84.6%、ユニット型が81.9%でしたので、コロナ禍の影響と思われる利用率の低下が見られ、特に短期入所で顕著です。
定員1人当たりサービス活動収益はサービス活動収益全体の増減を比較するのに最も適しています。従来型では前年度より64千円上昇して4,222千円、ユニット型も63千円上昇して4,947千円となりました。利用率が低下したにもかかわらずわずかではありますが上昇した要因は、利用者1人1日当たりサービス活動収益の上昇が寄与しています。
しかし水道光熱費等の上昇により、経費(=事業費+事務費)率が従来型で1.3ポイント上昇して29.6%、ユニット型でも1.3ポイント上昇して26.0%となりました。このためサービス活動増減差額比率は、従来型で前年度より1.3ポイント低下して0.5%、ユニット型も1.3ポイント低下して3.7%と、ともに過去最低を更新しました。
このような経営状況の悪化を反映して、赤字施設の割合も、従来型で5.3ポイント上昇して47.3%、ユニット型は5.2ポイント上昇して35.7%となりました。(公社)全国老人福祉施設協議会が10月3日に緊急告知をした62.0%という赤字施設割合には大きく及んでいませんが、それでも過去最高値を更新しています。
病院
WAMでは、病院の分類として、全病床に占める割合について、一般病床が50%超の場合を一般病院、療養病床が50%超の場合を療養型病院、精神病床が80%以上の場合を精神科病院として集計・分析しています。
一般病院は、入院・外来ともに患者1人1日当たり収益は前年度よりも上昇しましたが、病床利用率が1.1ポイント低下して75.3%となりまた1日平均患者数も8.0人減少するなど、患者数減少の影響が上回り、1床当たり医業収益はやや減少しました。また物価高騰の影響等により、医療材料費率が0.5ポイント、経費率が0.6ポイント上昇したことなどにより、医業利益率は1.4ポイント低下してマイナス1.2%と、令和2(2020)年度以来2度目のマイナス値を計上しました。
療養型病院もほぼ同様の傾向で、医業利益率は1.6ポイント低下して1.9%と、過去最低となりました。精神科病院は、病床利用率が低下した一方、入院単価が上昇したことで、1床当たり医業収益は187千円増加して6,535千円となりました。増収に伴い人件費率は低下したものの、経費率の上昇により、医業利益率は0.1ポイント低下して0.5%となりました。
2か年連続コロナ患者の受入を実施した同一病院では、コロナ関連補助金を除外すると、赤字病院の割合は61.3%となります。
本ページの掲載内容は当法人が発行する「気まぐれ通信」2023年10月号の内容と同一です。