2023年9月28日

令和3年度の社会保障費用について

国立社会保障・人口問題研究所が今月公表した令和3(2021)年度の「社会保障費用統計」によると、令和3年度の社会保障給付費(ILO基準)の総額は138兆7,433億円で、前年度と比べ6兆5,283億円、4.9%の増加と、昭和25(1950)年度の集計開始以降の最高額を更新しました。

令和3年度の社会保障給付費を「年金」、「医療」、「福祉その他」に分類して部門別にみると、「年金」が55兆8,151億円(総額に占める割合は40.2%)、「医療」が47兆4,205億円(同34.2%)、「福祉その他」が35兆5,076億円(同25.6%)でした。また「福祉その他」のうち「介護」は11兆2,117億円でした。当初予算ベースでの厚生労働省の試算では総額が129兆6千億円、うち「年金」が58兆5千億円、「医療」が40兆7千億円、「福祉その他」が30兆5千億円でしたので、「年金」では予測を下回ったものの、新型コロナウイルス感染症への対策費等として、「医療」と「福祉その他」でそれぞれ5兆円ずつ上乗せされた形となっています。

前年度からの増加額は、「年金」が1,816億円(0.3%増)、「医療」が4兆7,013億円(11.0%増)、「福祉その他」が1兆6,455億円(4.9%増)でした。「年金」は3か年連続で2,000億円未満の増加に留まっています。「医療」は新型コロナウイルスワクチン接種関連費用や医療保険給付の増加が主な要因です。厚生労働省の「令和3年度 医療費の動向」によれば、令和2年度の入院医療費、入院外医療費はともに新型コロナウイルス感染症の影響で令和元年度よりも減少していましたが、令和3年度は、入院医療費は令和元年度と同水準まで回復、入院外医療費は令和元年度を超える額となり、令和2年度と比較すると1兆6千億円の増、歯科や調剤、訪問看護まで合わせると2兆円の増額となっています。

「福祉その他」の増加は「子育て世帯等臨時特別支援事業費補助金」の2兆9,106億円が大きく影響しました。「福祉その他」のうち「介護」は2,052億円、率にして▲1.8%の減額と、介護保険制度創設以来、初めての減額となりました。もっとも「介護給費等実態統計」によれば、令和2年度の介護サービス費用額が10兆7,783億円であったのに対して、令和3年度は11兆291億円と2,508億円増加しており、減額は令和2年度に交付された新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(介護分)の4,153億円がなくなったことなどの影響と考えられます。

増加した社会保障給付費の財源を見ると、被保険者と事業主の拠出金(=社会保険料)で2兆円弱、国庫負担で6兆8千億円の増額となっています。社会保険料はその使途が明確なことから、増加した給付費のほとんどは国庫負担すなわち税金投入と言えます。

政府が7月25日に公表した「中長期の経済財政に関する試算」では、財政健全化の旗を降ろさず、「2025年度のプライマリーバランス(PB)黒字化を目指していくことに全く変わりはない」と説明しています。コロナ禍における対策で増えた歳出が正常化し、平時に戻っていくことが、PBの改善をもたらすとの理論です。今後「GX投資」、「防衛費倍増」、「少子化対策増加」など、歳出の増加が目白押しとなることが明白な中、コロナ関連対策の正常化だけで歳出の水準が大幅に減少してPBが改善するという点は疑問が残るところではありますが、政府が引続き2025年のPBを目指す以上、従来の社会保障給付についても、より厳しい政策の実施が予想されます。

◎国立社会保障・人口問題研究所
令和3年度 社会保障費用統計

本ページの掲載内容は当法人が発行する「気まぐれ通信」2023年8月号の内容と同一です。