2024年1月16日

特養の利用率と待機者数について

福祉医療機構(WAM)が、貸付先である、特別養護老人ホーム(従来型・ユニット型)、老人デイサービス(通所介護・認知症対応型通所介護)、認知症高齢者グループホーム、介護老人保健施設、病院(一般・療養型・精神科)の各施設等と社会福祉法人及び医療法人に関する、令和4(2022)年度決算に基づく各施設等の「経営分析参考指標」(以下「WAM指標」と言います。)の概要を公表しました。その内容については、WAM指標の詳細版を入手、分析した段階でご紹介したいと思いますが、今回は、概要でも触れられている、特別養護老人ホームの利用率と待機者数について見ます。

福祉医療機構(WAM)
WAM指標の概要

WAM指標における特養の利用率

WAM指標では、特別養護老人ホームを「従来型」と「個室ユニット型」に分けて集計しています。令和4年度の従来型の利用率は92.7%で、令和3年度からは1.0ポイント、10年前の平成24(2012)年度からは2.9ポイントも低下しています。個室ユニット型も令和4年度は93.3%で、前年度よりも0.5ポイント、10年前からは2.3ポイント低下しています。定員数の平均は、従来型で約70人、個室ユニット型で約60人ですので、10年前よりも日々1~2人の利用者が減少しています。

厚生労働省の統計における利用率

厚生労働省が毎年集計している「介護サービス施設・事業所調査」では、毎年9月末現在の介護保険施設の利用率が公表されています。直近の令和4年の特別養護老人ホームの利用率は94.7%で、前年の令和3年よりも0.8ポイント、現在と同じ集計方法となった平成30(2018)年と比較すると1.1ポイント低下しています。

この統計では従来型と個室ユニット型の区分はありませんが、都道府県ごとの利用率が集計されています。令和4年で最も利用率が高かったのは長野県で97.4%、次いで宮城県、佐賀県、熊本県が97.0%。逆に最も低かったのは宮崎県で92.3%、次いで奈良県が92.7%でした。宮崎県は平成30年の97.2%から4.9ポイント低下しています。

WAM指標における特養の待機者数

WAMでは「特養待機登録者数」についても貸付先からデータを集め、その平均値を平成28(2016)年度決算分から公表しています。令和4年度は、従来型は前年度よりも12.9%減の111.1人、個室ユニット型も10.2%減の63.2人と、それぞれ最低数を更新しています。

特養の入所申込者の状況調査

厚生労働省では、3年に1度、特別養護老人ホーム入所申込者(特別養護老人ホームに入所を申し込んでいるものの調査時点で当該施設に入所していない者)について各都道府県が集計した結果を取りまとめて公表しています。それによれば、要介護度3以上で待機者数は令和4年4月現在で25.3万人、前回(平成31年4月)調査の29.2万人よりも13.5%減少しています。減少率が最も大きかったのは大分県で▲44.4%、次いで群馬県で▲38.0%でした。

まとめ

利用率も待機者数も、ともに地域の需要を示す指標ですが、いずれの指標も低下・減少していることは気になります。要因としては、古くは平成27年度から入所者要件として原則として要介護度3以上となったこと、また最近では新型コロナウイルス感染症等の感染症の蔓延により利用率や待機者数が減少したとも考えられます。地域の高齢者数や要介護認定者数などの介護需要、また競合施設や関連施設の新設や増築等の供給量の変化、さらには自身の施設の職員配置や施設・設備の状況がサービス需要に的確に対応できているかを常に把握しておくことが必要です。

本ページの掲載内容は当法人が発行する「気まぐれ通信」2024年1月号の内容と同一です。