2024年5月26日

社会福祉法人の事業譲渡等の在り方に関する調査研究について

厚生労働省は、社会福祉法人の合併や事業譲渡等について、令和2(2020)年9月11日に「社会福祉法人の事業展開に係るガイドライン」を発出、またそれに先立ち令和元年度社会福祉推進事業「社会福祉法人の事業拡大等に関する調査研究事業」としてみずほ情報総研株式会社が「合併・事業譲渡等マニュアル」を取りまとめました(以下「ガイドライン等」と言います。)。
今般、令和5年度社会福祉推進事業として実施された「社会福祉法人の事業譲渡の在り方検討会」での検討をPwCコンサルティングが取りまとめ、報告書を公表しています。

合併について

合併については、令和4年度に認可・届出のあった58件の実例を調査、その目的・原因や形態等を整理しています。合併の理由としては、財政状態の安定や、理事・評議員等の高齢化、後継者不足や経営の効率化等が挙げられています。4月26日に開催された規制改革推進会議の健康・医療・介護ワーキンググループにおいて、M&A増加の背景として、①後継者不足、②人材の不足、③金銭面、④M&A支援機関の増加などが挙げられていることと通ずるものがあります。

事業譲渡等について

事業譲渡等については56件(事業譲渡22件、事業譲受34件)を調査、こちらでも財政状態の改善のほか、事業拡大・事業の効率化や地域の福祉インフラの維持等が挙げられています。これらのうち16件についてヒヤリング調査を行っていますが、土地建物等について、無償譲渡が8法人、無償貸与が1法人、有償譲渡が6法人、ヒヤリングで未確認が1法人でした。有償譲渡の場合は、不動産鑑定士やコンサルタントなど第三者の鑑定で譲渡額が決定していました。ただ「譲渡金額の妥当性を判断することが難しい」等の意見が所轄庁からありました。法人に対してガイドライン等の再徹底を行い、金額の妥当性に疑義が生じないようにしてはどうかとの意見が付されています。

仲介者と仲介手数料等について

今回の調査で、合併に際し明確な仲介者がいたのは1件、事業譲渡では経営コンサルタント等の第三者の仲介が2件で、仲介手数料を支払った例は、合併では無く、事業譲渡で1件だったとのことです。しかし前述のようにM&A支援機関が増加していると言われ、今後は仲介手数料を支払う案件の増加も見込まれます。社会福祉法人という特性を踏まえると、仲介者の必要性と選定理由の合理性、手数料金額の妥当性等について理事会での判断が必要と考えます。

理事長交代について

社会福祉法人には「経営権」という概念は存在しませんが、「経営権を購入」した理事長が多額の法人資産を持ち出したり、理事を変更する見返りに金銭の授受が行われるなどの不適切な事例が続いて発生しました。このため報告書では、現理事長が理事長に就任した経緯等を調査・整理しています。

現理事長が法人の理事・監事・評議員の中から就任しているのは、社会福祉協議会で51.7%、その他の社会福祉法人で73.7%、全体では66.8%で、都道府県・市区町村から紹介されたのが社会福祉協議会で22.5%、その他の社会福祉法人で4.6%、全体で10.2%です。

報告書の最後に、いわゆる経営権売買に係る不正事例とされる4事例を整理したうえで、不正の再発防止策として、業務上横領や贈収賄等の刑事責任並びに損害賠償責任を具体的に注意喚起するとともに、指導監査や計算書類確認時のチェックポイントを作成すべきとしています。

本ページの掲載内容は当法人が発行する「気まぐれ通信」2024年5月号の内容と同一です。