医療・福祉業界に限らず、多くの業界で人材不足が課題となっていますが、その傾向は今後さらに大きくなると考えられます。今回は人口や労働力の推移と将来推計について見てみます。
総人口と生産年齢人口等の推移と推計
日本の総人口は平成22(2010)年の1億2,805.7万人を頂点として、以後減少局面を迎えて令和2(2020)年には1億2,614.6万人となっています。一方、生産年齢人口(15歳~64歳)は平成7(1995)年の8,726.0万人が最多で、2020年には7,508.8万人でした。
国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(令和5年推計)」の出生中位(死亡中位)推計によれば、総人口は2040年には1億1,283.7万人、2056年に1億人を割り込み、2070年には8,699.6万人となります。また生産年齢人口は2040年に6,213.3万人に、2070年にはピーク時の半数に近い4,535.0万人にまで減少すると推計されています。
他方、高齢者人口(65歳以上)は、令和2(2020)年の3,602.7万人から2040年には3,928.5万人となり、その後2043年の3,952.9万人をピークとして2070年には3,367.1万人まで減少します。このように、労働生産人口の減少局面でも高齢者人口は増加することが、社会保障制度上の大きな課題です。
なお、この推計では毎年の出生数は長期にわたり70万人を超えて推移すると計算されていますが、2024年の出生数が70万人を下回ることはほぼ確実で、その後も回復の要因が乏しいことから、若年層の人口を中心に下振れが予想されます。
労働力調査による就業者数等の推移
我が国の就業者数を総務省の「労働力調査」で見ると、昭和43(1968)年に5千万人を、昭和63(1988)年に6千万人を超え、令和5(2023)年は6,747万人と、前年よりも24万人増加して過去最多を更新しました。これを男女別にみると、男性は3,696万人と前年よりも3万人減少しており、女性が27万人増加して3,051万人となっており、これが最多更新の要因です。女性の社会進出は好ましいことなのですが、生産年齢人口が既に減少している中、独身や子を持たない女性の増加がこの就業者数の増加を支えている面も大きく、一層の少子化の要因となっているとも考えられます。
産業別分類で「医療・福祉」が集計されるようになったのは平成14(2002)年からですが、その年は男112万人、女362万人で、男女計は474万人でした。直近の令和5年は男230万人、女681万人で、男女計は910万人と、21年で倍近くになっています。概ね4分の3が女性就業者であることが「医療・福祉」の特徴です。
労働力需給推計による将来推計
独立行政法人労働政策研究・研修機構の「2023年度版労働力需給の推計」では、経済成長等について、①ゼロ成長シナリオ+労働市場への参加が進まないケース、②成長戦略シナリオ+労働市場への参加が進むケース、③慎重シナリオ+労働市場への参加が一定程度進むケースの3つのシナリオを設定して推計しています。就業者数は、①では2022年の 6,724万人から2030年に6,430万人、2040年に5,768万人に減少、②では2030年に6,858万人に増加した後、2040年に6,734万人と減少、③では2030年に6,768万人に増加した後、2040年に6,375万人と減少すると見込まれています。
内閣官房・内閣府・財務省・厚生労働省が平成30(2018)年5月21日にまとめた「2040年を見据えた社会保障の将来見通し」によると、医療・福祉分野の就業者は1,065~1,068万人必要とされています。今回の産業別推計でも、②と③であればほぼ達成可能と考えられますが、一層の精査が必要です。
本ページの掲載内容は当法人が発行する「気まぐれ通信」2024年11月号の内容と同一です。
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