2024年11月27日

いわゆる「コロナ融資」について

2019年に発生した新型コロナウイルス感染症は、わが国では横浜港に寄港したダイヤモンド・プリンセス号内で翌年2月に感染者が確認され、その後全国に感染が拡大しました。外出行動の抑制やイベントの中止なども相次ぎ、収入が激減する事業者の増加も見込まれたことから、政府は株式会社日本政策金融公庫や株式会社商工組合中央金庫等の政府系金融機関を用いて、実質無利子・無担保等の特別融資(以下「コロナ融資」と言います。)を実施しました。会計検査院の「令和4年度決算検査報告」によれば、日本政策金融公庫等が令和元(2019)年度から令和4(2022)年度に実施したコロナ融資は19兆4,365億円でした。その他の機関や民間金融機関を含めたコロナ融資の貸付総額は56兆円を超えたとする新聞報道もありました。

福祉医療機構のコロナ融資

福祉医療機構(WAM)の福祉・医療貸付事業は、社会福祉施設・事業所、介護施設・事業所などに対する「福祉貸付」と病院、診療所や介護老人保健施設など医療関係施設に対する「医療貸付」とに区分されますが、ともに通常は建物の設置・整備等に必要な資金の融資が中心となっています。しかし令和2(2020)年2月からはコロナ融資を行い、WAMの「令和4事業年度事業報告書」によれば、コロナ融資開始以来の累計融資実績は4万4,890件、2兆954億円とされています。またWAMの「業務統計」から、福祉貸付の「経営資金」、医療貸付の「長期運転資金」の令和元年度から令和4年度までの貸付契約額を集計すると、4万4,192件、2兆759億円となります。若干の違いは有りますが、コロナ融資の累計実績と比較して、「経営資金」と「長期運転資金」の合計額はほぼ同じだと考えられます。なおこの貸付契約額を借入れ主体別に見ると、「医療法人」が概ね半分の1兆106億円、株式会社やNPOなど「その他法人」と「個人」の合計額が9,022億円なのに対して、社会福祉法人は1,631億円で、WAMのコロナ融資総額の8%弱であり、利用は他と比べて低額でした。

社会福祉法人の運営資金借入金

「社会福祉法人の財務諸表等電子開示システム」の開示データから貸借対照表の固定負債の「長期運営資金借入金」と流動負債の「1年以内返済予定長期運営資金借入金(以下「1年ルール分」と言います。)」の合計額を見ると、新型コロナウイルス感染症流行前の平成30年度末(2019年3月期)は2,421億円でしたが、令和4年度末(2023年3月期)は4,039億円と、この4年間に1,618億円増加しています。WAMのコロナ融資の累計額にほぼ相当する額が借入金として残っていると言えます。  なお令和4年度末で長期運営資金借入金(1年ルール分を含む)を計上している社会福祉法人は3,361法人でしたが、これは財務諸表等電子開示システムで届け出た法人のうち資産の部合計が0円以外であった2万1,002法人の16.0%に相当します。帝国データバンクの調査によれば企業の52.4%がコロナ融資を利用したと回答していることと比べると、ここでも社会福祉法人の利用率が低いことが分かります。しかし1法人当たりの平均残高が1億2千万円というのは、コロナ融資以外の借入金を含んでいるとはいえ、かなり思い負担だと感じます。

コロナ融資は令和2年度から本格化し、その据置期間(返済猶予期間)は最長5年間でしたので、令和7年度から返済が本格化します。令和2年度に5年間の据置期間でコロナ融資を借り入れた法人は、本年度の決算から1年ルール分について流動負債に計上することとなります。

本ページの掲載内容は当法人が発行する「気まぐれ通信」2024年10月号の内容と同一です。

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