2025年1月4日

社会福祉法人の経営状況(令和5年度決算)について

独立行政法人福祉医療機構(WAM)では、毎年度、貸付先法人及び貸付対象の各施設の経営状況について、債権管理の一環として決算書及び事業報告書等に基づく調査・分析を行い、その結果を「経営分析参考指標」として公表しています。今般、令和5(2023)年度決算分の社会福祉法人の経営分析参考指標(ダイジェスト版:以下「WAM経営指標」と言います。)が公表されましたので、概略をご説明します。

集計・分析対象法人の概要

WAM経営指標の集計法人数は、令和2(2020)年度の8,483 法人をピークに減少し、2023年度では、前年度よりも261法人減少して8,037法人でした。わが国の社会福祉法人のほぼ全数調査である令和5年度(決算としては令和4年度決算分)の「社会福祉法人の財務諸表等電子開示システム」の開示データ(以下「開示データ」と言います。)では、登録社会福祉法人総数は21,082法人(うちサービス活動収益が計上されている法人は20,939法人)ですので、WAM経営指標は全体のうちの約4割が対象となっています。
WAM経営指標の2023年度の収益の(構成比)を見ると、①介護保険事業収益が50.2%、②老人福祉事業収益が2.6%、③児童福祉事業収益が2.6%、④保育事業収益が22.9%、⑤就労支援事業収益が1.0%、⑥障害福祉サービス等事業収益が15.3%、⑦生活保護事業収益が0.5%、⑧医療事業収益が3.6%、⑨その他収益が1.4%、となっています。他方、開示データ(2022年度決算分です)では、①42.2%、②2.6%、③2.2%、④20.3%、⑤1.0%、⑥15.4%、⑦0.4%、⑧10.5%、⑨5.4%、となっていますので、全体に比してWAMの貸付先は介護事業と保育事業に比重が置かれ、医療事業とその他事業に薄い傾向があることが分かります。

収益規模の推計

WAM経営指標に掲載されている「1法人当たり従事者数」に「従事者1人当たりサービス活動収益」を乗じることにより、「1法人当たりサービス活動収益」を試算することができます。この試算によれば1法人当たりサービス活動収益は、2023年度は7億75百万円と、前年度の7億57百万円から18百万円ほど増加したと考えられます。
なお、開示データの令和4年度決算分の1法人当たり平均サービス活動収益は5億93百万円ですので、WAMの貸付先法人は全国平均よりも規模が大きめであることも分かります。

従事者1人当たり人件費と人件費比率

職員の処遇改善への取組み等により従事者1人当たり人件費は9年連続で上昇し、2023年度は4,350千円と、前年度より100千円上昇しました(上昇率2.3%)。ただしサービス活動増減差額の増加により、人件費比率は前年度よりも0.2ポイント低下して67.1%となっています。

経費比率(事業費比率+事務費比率)

WAMでは事業費と事務費の合計を「経費」として「経費比率」を算出しています。令和3(2021)年度以降の水道光熱費の高騰等により、前年度の経費比率は25.0%と社会福祉法人改革が実施された平成28(2016)年度以降最高となりましたが、2023年度は24.6%と前年度よりも0.4ポイント低下しました。

サービス活動増減差額比率等

人件費比率や経費比率等が低下した結果、2023年度のサービス活動増減差額比率は0.7ポイント上昇して2.4%まで改善しました。しかしながら未だに前年度に次いで低い水準となっています。赤字法人(経常増減差額が0未満)の割合も前年度より4.8ポイント改善して30.9%でしたが、過去3番目の高水準です。

本ページの掲載内容は当法人が発行する「気まぐれ通信」2024年12月号の内容と同一です。

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