2025年4月1日

社会福祉法人における継続事業の前提に関する注記について

社会福祉法人会計基準第29条で、「計算書類には、法人全体について次に掲げる事項を注記しなければならない。」として16項目が掲げられています。その第1号に「会計年度の末日において、社会福祉法人が将来にわたって事業を継続するとの前提(以下この号において「継続事業の前提」という。)に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在する場合であって、当該事象又は状況を解消し、又は改善するための対応をしてもなお継続事業の前提に関する重要な不確実性が認められる場合には、継続事業の前提に関する事項」と規定されています。

重要な疑義を生じさせるような事象又は状況

厚生労働省社会・援護局福祉基盤課等が4課連名で発出した平成23年7月27日付の事務連絡「社会福祉法人会計基準の運用上の取扱いについて(Q&A)」(以下「Q&A」と言います。)では、「継続事業の前提に重要な疑義を生じさせる事象又は状況が存在する場合とは、例えば債務超過等を指します」と、例示しています。

一方、日本公認会計士協会がまとめた「公益法人の継続事業の前提について」に記載された例示を社会福祉法人に置き換えてみると、財務指標関係だけでも①サービス活動収益計の著しい減少、②継続的な経常増減差額又は事業活動資金収支差額のマイナス、③重要なマイナスの経常増減差額又は当期活動増減差額の計上、④重要なマイナスの事業活動資金収支差額の計上、⑤債務超過の5例となり、他にも財務活動関係で5例、事業活動関係で6例、その他で2例を挙げています。

これらから見ると「事象又は状況」は多岐にわたりそうですが、いずれにしても債務超過はこの「事象又は状況」に該当します。

解消等の対応をしても不確実性が認められること

これらの「事象又は状況」が存在する場合の全てに継続事業の前提に関する注記が必要なわけではありません。「当該事象又は状況を解消し、又は改善するための対応をしてもなお、継続事業の前提に関する重要な不確実性が認められる」ときに注記が必要になります。つまり、事象又は状況を解消し、又は改善するための対応を行うことで継続事業の前提が確保されるならば、注記は不要となります。ただし、この場合は「対応策の実施」→「継続事業の前提の確保」となるか否かについての判断が介入するので、その判断を誰がどのように行ったかは明確にしておく必要があるでしょう。

注記が必要となる場合の注記すべき事項

Q&Aでは、財務諸表に注記すべき事項として、
①当該事象又は状況が存在する旨及びその内容
②当該事象又は状況を解消し、又は改善するための対応策
③当該重要な不確実性が認められる旨及びその理由
④当該重要な不確実性の影響を財務諸表に反映しているか否かの別
を挙げています。

債務超過の実態と注記の有無

社会福祉法人の財務諸表等電子開示システム」で令和5(2023)年度に計算書類(令和4年度決算分)を開示している社会福祉法人は21,011法人でしたが、うち債務超過となっている法人は125法人ありました。うち継続事業の前提に関する注記が付されていたのは10法人のみで、かつ注記すべき事項4項目について何らかの形で全て触れられていたのは4法人でした。また「債務超過だが解消・改善策により継続事業の前提が確保される」という趣旨の注記は1件もありませんでした。

今回は「債務超過」の案件のみを見ましたが、「経常増減差額が3期連続でマイナス」で見た場合、法人数は数千件に及びます。計算書類の内容だけでなく注記にも目を配りたいものです。

本ページの掲載内容は当法人が発行する「気まぐれ通信」2025年3月号の内容と同一です。

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