2025年10月6日

介護情報基盤について

我が国は、医療と介護の複合的なニーズを持つ85歳以上の人口が増加する一方で生産年齢人口が減少するという深刻な状況にあります。限りある人的資源を最大限に活用しながら、質の高い効率的な介護サービス提供体制を確保することが喫緊の課題となっており、ICT(情報通信技術)を活用した業務の効率化が注目されています。

このような流れの中で、令和5(2023)年の法改正で介護情報基盤が「全国医療情報プラットフォーム」の一部として位置付けられ、整備が法定されました。

介護情報基盤による利便性

このシステムの導入によって、介護施設や利用者にとってたくさんのメリットが想定されます。

(1) 業務の効率化:一度入力した情報が自動的に関連書類に反映されるため、事務作業が大幅に減ります。
(2) 介護業務の質的向上:事務負担が減ることで職員が本来のケア業務に集中でき、良質で効率的な介護の実現が可能です。
(3) 情報共有の迅速化:利用者の状態変化がリアルタイムで関係機関に伝わるので、迅速な対応が期待されます。特に令和3(2021)年度から導入されたLIFE(科学的介護情報システム)の情報が関係者間で安全に共有でき、利用者の状態やケアの効果をより多角的に把握して適切なサービス提供につなげることが可能となります。
(4) 透明性と信頼性の向上:情報公開により、施設の運営内容の透明化が図れます。
(5) 利用者の主体性向上:利用者自身がマイナポータルを通じて、自分のケア状況を確認できるようになり、利用者の主体性が増します。

介護事業所が準備・対応すべきこと

このシステムの導入に向けて、介護事業所には以下のような準備や対応が求められています。

(1) 利用者情報のデジタル管理:ケアプランや要介護認定情報、請求・給付情報などを電子的に記録・共有する体制を整えることが必要です。
(2) 情報の正確な入力と更新:一度入力した情報が関係機関に共有されるため、ミスのない運用が求められます。
(3) 職員のIT理解力の向上:紙ベースからの移行に伴い、職員が新システムを使いこなせるように教育や研修が必要です。

介護情報基盤の課題

このように、介護サービスの近代化には不可欠な情報基盤整備ですが、課題もいくつか指摘されています。主なものとしては、以下のようなものが挙げられます。

(1) 自治体のシステム移行の遅れ:約7割の自治体が2025年度末までの移行が難しいと回答しています。
(2) 事業所のICT環境整備の遅れ:小規模事業所ではパソコンやネット環境が不十分なところもあります。
(3) 職員のシステム教育時間の確保:忙しくて時間がとりにくい現場職員に対して、新しいシステムに対応するための研修やサポートが必要です。
(4) 情報セキュリティとプライバシー保護:個人情報を扱うため、厳格な管理体制と利用者の同意が不可欠です。

令和8(2026)年4月からの本格運用を目指して準備が進められており、2025年8月には「介護情報基盤ポータルサイト」が公開されました。今後も各種の説明や情報提供があると思いますので、ご留意ください。


本ページの掲載内容は当法人が発行する「気まぐれ通信」2025年9月号の内容と同一です。

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