厳しさを増す社会福祉法人の経営環境
WAMのデータによれば、全国約21,000の社会福祉法人のうち、債務超過に陥っている法人は直近6年間で約3.5倍に増加しており、その予備軍とも言える「サービス活動増減差額が3年以上連続マイナス」の法人は、実に全体の約20%弱(4,079法人)に上ります 。物価高騰、人件費の増加や人材不足など社会福祉法人を取り巻く経営環境は厳しさを増し、「マイナス決算」が他人事ではない時代に突入しています。
減価償却費=建て替え資金は非現実的?
これまで、建物の更新時期に必要な資金は、「毎年度の減価償却費相当額の資金が残せているかどうか」が目安とされてきました。減価償却費は事業活動計算書では経費計上されますが、実際に資金が流出するわけではなく、資金収支計算書では同等の資金が残せているはず、という考え方です(いわゆる自己金融機能)。しかし、決算が完了してから結果を報告するいわゆる「どんぶり勘定」的な経営では、この目標が達成できていない法人が多いのが実情です。特に、国庫補助金や特別積立金を取り崩した場合、事業活動計算書上はこれらは経費のマイナスとして計上されます。将来の建て替えに補助金が期待できない現状では、取り崩し額控除前の減価償却費相当額の資金を残すことを目標とすることが必要不可欠です。
資金収支計算書を活用した逆算経営の必要性
社会福祉法人では、貸借対照表・事業活動計算書に加え、資金収支計算書(財務三表)を作成する義務があります。この資金収支計算書を活用することで、将来の建て替え資金だけでなく、借入金の償還資金や新規設備投資の資金の確保を一体的に計画することが可能になります。求められるのは、目標を先に掲げ、そこから逆算的に経営計画を立てる管理会計手法への切り替えです。
・従来の予算作成:今年度実績予測額+αで、上から下に各科目別に積算する
・求められる計画:将来の建替必要資金を計算し、その金額から逆算して、年間収入、年間支出を計画する
現状分析でわかるあなたの法人の「資金不足額」
まず、現在の財務三表から、将来の建て替え資金がどのくらい不足することになるか現状を分析することが出発点となります。動画では、とある認定こども園のケースで建物付属設備を含む施設の平均残存年数を12年とシミュレーションして現状分析してみました。現在の経営状況をそのまま12年間続けた場合、インフレや想定外の資金需要を考慮しなければ、取得価格と同額の資金確保はほぼ達成できる見込みでした。しかし、物価高騰を考慮し、再建築費用が元の取得価格を上回るという想定では、12年後に約1億2,400万円の資金不足が生じるという予測結果が出ました。この不足額を12年間で確保するためには、年間で約1,039万円を、現状よりも多く余剰資金として生み出す必要があります。動画と同様に現状分析してみた場合、あなたの法人では、将来に向けていくらの資金が必要でしょうか?
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次回の動画では、この年間約1,039万円の余剰資金を生み出すための具体的な計画手法、すなわち損益分岐点(収支分岐点)分析を活用した経営戦略シミュレーションを解説します。
