2025年12月24日

医療・介護等支援パッケージについて

11月21日に閣議決定された『「強い経済」を実現する総合経済対策~日本と日本人の底力で不安を希望に変える~』では、「これまで累次の支援策を講じたものの、依然として物価・賃金上昇の影響を受けている状況であることを踏まえ、令和8年度報酬改定については、他産業の状況も踏まえた賃上げや物価上昇を踏まえた適切な対応が求められており、医療機関や薬局、介護施設等における経営の改善及び従業員の処遇改善につなげるため、その報酬改定の効果を前倒しすることが必要であるという認識に立ち、「医療・介護等支援パッケージ」を緊急措置する」と明記されました。これらの施策を反映した補正予算案も国会に提出され、12月16日に可決、成立しました。

医療・介護等支援パッケージの概要

施策例としては、
①医療・介護・障害福祉分野における物価上昇・賃上げ等に対する支援
②独立行政法人福祉医療機構(以下「WAM」と言います。)による優遇融資への支援
③WAMによる資本性劣後ローンの創設
④医療・介護・障害福祉分野における生産性向上・職場環境改善に対する支援
⑤病床数の適正化に対する支援
⑥産科・小児科医療機関等に対する支援
⑦訪問介護等サービス提供体制確保支援事業
⑧地域のケアマネジメント提供体制確保支援事業
⑨医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージに基づく医師・医療機関への支援
⑩ドクターヘリ運航体制緊急支援事業
⑪医療、介護等の人材不足分野におけるハローワークでのマッチング支援の強化
⑫中央ナースセンター事業(多様で柔軟な働き方に対応したマッチングの推進経費・NCCS改修による無料職業紹介事業の充実経費部分)
等が列挙されています。

物価上昇・賃上げ等に対する支援

介護報酬改定は原則として3年に1回で、次回は2027年度に行われる予定でしたが、長引く物価高騰などの影響も踏まえて、2026年度に臨時で改定して必要な対応する方針が示されています。また賃上げ・職場環境改善の支援については、介護分野の人材不足が厳しい状況にあるため、人材流出を防ぐための緊急的対応として、報酬改定の時期を待たず行われます。加算取得事業者またはこれに準ずる事業者を対象として、介護従事者に対して月1万円の賃上げ支援、生産性向上や協働化に取り組む事業者の介護職員に対しては月0.5万円が上乗せされます。病院の場合は、賃金分として1床当たり8.4万円が支援されます。

民間病院に対する資本性劣後ローンの創設

地域で必要な医療機能を有していながら、債務超過等により必要な新規融資が受けられなくなっている民間病院の財政状況を改善させ、民間金融機関からの融資再開につなげるため、WAMの融資メニューに資本性劣後ローンの制度が創設されます。民間金融機関が病院の経営改善計画の策定を支援し、WAMが経営改善計画を踏まえて資本制劣後ローンを融資します。民間金融機関は資本性劣後ローンを資本とみなすことにより、債務超過状態が解消して財務(BS)が改善したとして、経営改善に必要な追加融資を行うというスキームです。WAMと民間金融機関が連携して経営改善を行うことで、地域医療の維持に寄与することを目指します。

厚生労働省の「介護サービス施設・事業所調査」によれば、昨年10月1日現在の全国の介護職員数は212万6,227人で、2年連続のマイナスこそ回避しましたが、増加幅は極めて小さいものでした。これからの医療・介護・福祉サービスが維持できるだけの人材と社会インフラの確保が必要不可欠だと考えます。

本ページの掲載内容は当法人が発行する「気まぐれ通信」2025年12月号の内容と同一です。

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