2023年9月28日

医療法人の経営情報の公表について

社会福祉法人については、社会福祉法により計算書類等の届出と公表が義務化されていることに加え、ほとんどの法人がWAM NET上の「社会福祉法人の財務諸表等電子開示システム」へのアップロードによる情報公開を行っているため、個別の法人についてのデータをインターネットで閲覧・ダウンロード可能であるほか、2万法人余の法人全体の分析・集計も公表しているため、政策目的等での活用が可能となっています。

医療法人についても、毎会計年度終了後、事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書、監査報告書及び関係事業者との取引の状況に関する報告書その他の書類を作成し、都道府県に届出ることが義務付けられていましたが、当該損益計算書には事業収益・費用の大科目のみが表示され、中科目が表示されていない状態にありました。

2023年5月12日に成立した「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律(以下「全世代対応型社会保障制度法」と言います。)」の施行に伴う「医療法」、「医療法施行令」及び「医療法施行規則」等の改正により、
①医療法人の経営情報の収集及びデータベースの整備をし、
②収集した情報を国民に分かりやすくなるよう属性等に応じてグルーピングした分析結果の公表、
③医療法人に関するデータベースの情報を研究者等へ提供する
制度を創設することとなりました。施行日は、①及び②については本年8月1日、③は公布日から3年以内に政令で定める日とされています。

データベースの概要としては、原則として全ての医療法人が対象となり、病院・診療所における収益及び費用と、任意項目として職種別の給与(給料・賞与)及びその人数等の情報が収集され、分析結果は、国民に分かりやすくなるよう属性等に応じてグルーピングして公表されます。ここからは推測ですが、現在診療報酬改定の都度に実施されている「医療経済実態調査(医療機関等調査)報告」をさらに詳細にしたような形式で集計・公表されるのではないでしょうか。

社会福祉法人の財務諸表等電子開示システムとは異なり、個別の医療機関の情報は公表されず、また上記のように職種別の給与(給料・賞与)や人数等の情報の報告は任意とされています。ただし財務省からは「医療機関の『経営情報データベース』については、匿名であること、国民への説明責任の観点を踏まえ、職種別の給与・人数の提出は義務化すべき」との意見も出ています。

収集する内容の詳細は省令以下で規定されています(文末掲載の厚生労働省のホームページをご参照ください)。令和5年8月以降に決算期を迎える法人から、毎年会計年度終了後、原則として3か月以内に、医療機関等情報支援システム(G-MIS)か郵送のいずれかで、都道府県へ病院・診療所ごとの経営情報を報告することになります。

なお全世代対応型社会保障制度法では、介護サービス事業者の経営情報についても公表することが定められており、こちらの施行日は令和6年4月1日とされています。厚生労働省老健局の令和6年度予算要求では「介護サービス情報公表システム整備等事業」として5.8億円が計上されています。

また障害保健福祉部の要求事項でも「障害福祉サービス等情報公表システムの機能強化」として5.0億円計上されており、こども家庭庁でも経営情報の見える化が検討されています。

◎ 医療法人に関する情報の調査及び分析等について

本ページの掲載内容は当法人が発行する「気まぐれ通信」2023年9月号の内容と同一です。