2024年9月11日

2022年度社会保障給付費について

国立社会保障・人口問題研究所が公表した「社会保障費用統計」によると、令和4(2022)年度の社会保障給付費(ILO基準)の総額は137兆8,337億円で、過去最高額となった前年度よりも9,189億円、率にして0.7%減少しました。昭和25(1950)年度の集計開始以来、減少に転じたのは初めてですが、減少したとはいえ前年度に次ぐ過去2番目の高い水準となっています。

社会保障給付費の対国民所得(NI)比は、昭和51(1976)年度に10%を、平成12(2000)年度に20%を、平成23年度に30%を超えました。その後は30%前後で推移していましたが、新型コロナウイルス感染症が本格的に流行した令和2(2020)年度に35.16%となりました。令和3(2021)年度の35.06%から今回33.70%まで低下したものの、依然として高い水準にあります。

年金給付費について

令和4年度の社会保障給付費を部門別に分類すると、年金は前年度244億円減(△0.0%)の55兆7,908億円で、総額に占める割合(構成割合)は40.5%でした。この構成割合は、昭和54(1979)年度に40%を、平成2(1990)年度には50%を超えましたが、数次にわたる制度改革等により平成22(2010)年度には再度40%台となっています。

「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業年報」によれば、令和4年度末の重複のない公的年金の実受給者数は3,975万人で前年度末よりも47万人減少しており、このことが対前年度の年金額の微減として表れたと言えます。

医療給付費について

医療は前年度よりも1兆3,306億円(+2.8%)増加して48兆7,511億円(同35.4%)でした。前年度からの増額の主な要因としては、オミクロン株の流行などにより新型コロナの患者数が増えたことが第一に挙げられます。「令和4年度 医療費の動向-MEDIAS-」によれば、主な病名が新型コロナと診断された人の医療費は、令和4年度ではおよそ8,600億円で、令和3年度の2倍近くに増えたと推計されています。このことや引続き新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金が増額されたこと、さらには令和2年度の受診控えの反動で医療機関を訪れる人が増えたことが増額の主な要因と考えられます。

福祉その他について

「福祉その他」について見ると、前年度よりも2兆2,251億円減(△6.3%)の33兆2,918億円でした。主として前年度に支給されていた子育て世帯を対象にしたコロナ禍対応の給付金が大きく減少したこと等が減少の要因です。 福祉その他のうち「介護」について見ると、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(介護分)がなくなったことにより前年度初めて減少しましたが、令和4年度は795億円増加(+0.7%)して11兆2,912億円となりました。 2022年度の「介護給付費等実態統計」によると、要介護認定を受けて利用する介護サービスが前年比1,586億円増の10兆9,080億円、状態の軽い要支援認定を受けた人が主に利用する介護予防サービスが同34億円増の2,831億円でした。

今後の見込みについて

厚生労働省が令和元年度に取りまとめた「2040年を展望した社会保障・働き方改革本部のとりまとめ」では、2040年度の社会保障給付費を188.2兆円~190.0兆円と見込んでいます。2025年以降、「高齢者の急増」から「現役世代の急減」に人口構造が変化します。現役世代の人口の急減という新たな局面における課題への対応が必要です。

本ページの掲載内容は当法人が発行する「気まぐれ通信」2024年8月号の内容と同一です。