2025年8月1日

2040年に向けたサービス提供体制の検討について②

厚生労働省の「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方」検討会の中間とりまとめについては、本年4月号でご説明しましたが、7月25日に最終のとりまとめが公表されたのでお知らせします。中間とりまとめは高齢者施策を中心としたものですが、今回のとりまとめは、障害福祉分野や保育分野なども含めた福祉サービスの共通の課題について検討してとりまとめられたものです。したがって、「基本的な考え方」の部分は大きな手直しはありませんでした。

需要の変化に応じたサービス提供体制

障害福祉分野においても、原則として介護分野と同様、全国を①中山間・人口減少地域、②大都市、③一般市等、という地域の分類を基本としつつ、分野特有の需給状況や個々のニーズ等を踏まえ、その地域の状況に応じたサービス提供体制や支援体制を構築していくことが重要であるとしています。

一方、保育分野においては、「中山間・人口減少地域」の中でも、中山間地域や離島を中心とした①既にこどもが少ない地域や、「大都市部」や「一般市等」の中でも、②就学前人口減少が今後加速度的に進んでいく地域、③都市部を中心として局地的に待機児童の発生やこどもの急激な減少が生じながら全体としては緩やかに就学前人口が減少していく地域と、地域を更に分類して対応方策を講じていく必要があるとしています。

なお、保育について「…女性の就業率(25~44歳)は 2000年以降上昇傾向にあり、これに伴い、保育所等利用率も上昇している。共働き世帯についても、平成30年の69.0%から令和5年度は75.6%まで割合が増加している。また、・・・(中略)・・・。このように、保育需要については、増要因も存在することには留意が必要である」という記述が有りますが、その根拠と思われるグラフ(参考資料(第二分冊)25頁)では、算定のもととなった世帯数自体が平成30年の681万世帯から令和5年には565万世帯に減少しており、それぞれの割合を乗じても、共働き世帯数は470万世帯から427万世帯へと減少していることから、これを増要因とすることは無理があると思われます。

既存施設の有効活用等

現行制度では、社会福祉法人、医療法人等が施設等の財産を有している場合で、取得の際に国庫補助がなされている場合においては、転用・貸付の後に社会福祉事業を行う場合であっても、財産取得から10年未満の転用の場合(補助対象事業を継続した上で一部転用する等の場合を除く。)等には、原則補助金の国庫返納が必要です。今般、一定の条件下における全部転用や廃止(計画的な統廃合に伴う一定の機能を維持した上での廃止に限る。)等について、補助金の国庫返納を不要とすることなど、より柔軟な仕組みの検討について言及されています。地域密着型特別養護老人ホームから広域型施設への転用について、補助金の国庫返納が不要とする点についても、ルールを明確化した上で運用を図るべきという意見も付け加えられました。

事業譲渡・合併支援や連携推進法人の活用等

その他、円滑な事業譲渡・合併を進めるためのガイドラインの策定等の必要性や法人等の経営支援、社会福祉連携推進法人の活用や地域の事業者間の「連携」、地域共生社会の確立、人材確保と生産性向上(DX)など、幅広い論点が盛り込まれています。

なお、今次のとりまとめは、福祉の現場の視点を踏まえつつ方向性や考え方を示すものであり、具体的な制度や報酬は社会保障審議会の介護保険部会、介護給付費分科会、福祉部会等で議論が進められる予定です。

本ページの掲載内容は当法人が発行する「気まぐれ通信」2025年7月号の内容と同一です。

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