公益財団法人介護労働安定センターが7月28日に「令和6年度介護労働実態調査」を公表しました。この調査は、全国の介護保険サービスを実施する事業所のうちから介護労働安定センターが無作為抽出した事業所に対して実施され、有効回答は9,044件、回収率は52.9%でした。この調査は毎年実施されており、調査事項は多岐にわたっていますが、今回はその中から外国籍労働者についてご報告します。
また、公益社団法人全国老人福祉施設協議会(全国老施協)も外国人介護人材に関する2つの調査報告を公表しているのでこちらも併せてご報告します。
介護労働実態調査
介護の仕事を業務とする外国籍労働者を受け入れている事業所の割合は15.4%に留まっていますが、前年の13.4%よりも2.4ポイント上昇しました。介護サービス類型別にみると、施設系(入所型)が44.9%、居住系が31.0%で3割を超えています。
今後の外国籍労働者の受け入れ方針については、受け入れている事業所では「現在の外国籍労働者数の水準を補充する程度の受け入れをする」が49.3%で最も高く、次いで「今後、積極的に受け入れを拡大していきたい」が32.3%となっています。他方、受け入れていない事業所では「今後も受け入れようとは思わない」が59.2%で最も高く、次いで「今後、受け入れを検討してみたい」が30.1%でした。
外国籍労働者受け入れの課題としては、「利用者や他の従業員との意思疎通(日本語能力及びコミュニケーション)が難しい」が36.5%と最も高く、次いで「受け入れのための住宅や寮などを確保することが困難」が23.6%、「外国籍労働者の仕事上のサポート役の負担が大きい」が22.4%となっています。
受け入れている事業所では「受け入れのためのコストが高い」(35.3%)が、受け入れていない事業所では「利用者が外国籍労働者によるサービス提供に抵抗がある」(14.5%)が相対的に高くなっています。
外国人介護人材に関する実態調査
全国老施協は「令和6年度 外国人介護人材に関する実態調査報告書」を8月4日に公表しました。この調査は、全国7,726の介護施設を対象に実施されたもので、有効回答は1,837施設でした。回答施設のうち、44.9%に当たる824施設が外国人材を受け入れており、また受け入れ施設の57.4%が「今後も増やしたい」と答えています。
受け入れ状況を都道府県で見ると、茨城県、群馬県、東京都、神奈川県等で受入れ率が高く、岩手県、秋田県、山形県、長野県等で低い結果となっています。受け入れ施設の支援体制としては、適切な住まいの確保などの「住居支援」は84.7%にのぼり、買い物の補助や物品貸与などの「生活支援」が78.0%、インターネットの整備が67.4%、通勤支援(自転車貸与など)が66.0%と、多面的なサポートが実施されています。
解決すべき課題としては、①特定技能の5年経過後の帰国、②住居の確保、③日本語教育、④厚生年金の脱退一時金問題、等が挙げられています。
外国人介護人材定着度調査
全国老施協の「令和6年度 外国人介護人材定着度調査報告書」によれば、外国人介護人材の離職理由としては、「介護以外の職種への転職」が最も多く、過去5年間で52.1%を占めています。離職理由の2位は「賃金への不満(36.3%)」、3位は「病気のため(26.8%)」、4位は「他の施設への転職(22.3%)」でした。
生産年齢人口の急減が見込まれる状況下で、外国人材や介護ロボット・ICT機器等の活用が望まれます。
本ページの掲載内容は当法人が発行する「気まぐれ通信」2025年8月号の内容と同一です。
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