令和５年の医療法改正により、原則として全ての医療法人を対象として、経営情報等の報告が医療法により義務付けられました。医療法人が開設する病院及び診療所に係る経営等の情報を収集して、医療法人経営情報データベース(Medical Corporation Database：以下｢MCDB｣と言います。)として整備されています(令和５年８月決算の会計年度から対象)。MCDBを活用した分析については、(独)福祉医療機構(WAM)がその結果をWAMNET上に公開しています。

MCDBは、｢社会福祉法人財務諸表等電子開示システム｣とは異なり、個々の法人のデータ等は開示されていませんが、国民に分かりやすくなるよう属性等に応じてグルーピングした分析結果を公表することとされています。

WAMNET上では令和６(2024)年3月に法人単位の事業報告書等を集約した概括的なものが公表されていましたが、今般、｢経営情報等2022(R4)年度版｣、｢経営情報等2023(R5)年度版｣と｢経営情報等2024(R6)年度速報版｣が公表されたので、その中から主な事項を説明します。

分析の構成

各年度の分析は、｢医療法人｣と｢病院･診療所｣とに分けて分析されています(2022年度版は｢医療法人｣のみ)。｢医療法人｣は｢法人全体｣とその内訳として｢病院のみ法人｣、｢一般有床診療所のみ法人｣、｢一般無床診療所のみ法人｣、｢歯科無床診療所のみ法人｣を集計･分析しています。また都道府県ごとの分析もされています。ただし2024年度版速報版では、2025年７月収集分までの集計のため、都道府県の分析はありません。　｢病院･診療所｣では、｢施設の種類別にみた経営指標｣と｢病院の(種類別)規模別にみた経営指標｣が公表されています。

医療法人の分析結果

医療法人数は、2022年度は45,583法人、2023年度は44,094法人、2024年度速報版では32,129法人でした。うち病院のみ運営法人は、それぞれ1,718法人、1,541法人、967法人となっています。
医療法人全体の事業収益対事業利益率は、2022年度は3.8%、2023年度は2.5%、2024年度速報版では2.0%と、年々低下しています。うち病院のみ運営法人は、2022年度は1.6%と黒字でしたが、2023年度には△0.3%と赤字となり、2024年度速報版では△0.9%と、赤字幅が拡大しました。事業赤字法人の割合も、医療法人全体で2022年度は35.5%、2023年度は37.3%、2024年度速報版では43.0%と、年々増加しています。うち病院のみ運営法人は、それぞれ48.7%、55.3%、58.7%と、法人全体を大きく上回っています。

病院の分析結果

2024年度速報版の｢病院･診療所｣から病院の経営指標をみると、医業収益対医業利益率は、一般病院で△1.4%、療養型病院で＋0.7%、精神科病院で△2.0%、病院全体では△1.1%でした。この分析で用いている｢一般病院｣、｢療養型病院｣、｢精神科病院｣の定義は、WAMの経営サポートセンターが集計している｢病院の経営分析参考指標｣とは異なることに注意が必要です。

厚生労働省が11月26日に公表した2023、24年度の｢医療経済実態調査｣でも、病院全体の67.2%が赤字という結果が出ています。これらの実態を踏まえた診療報酬改定が行われることを強く望みます。

◎医療法人の経営情報のデータベースを活用した分析等
https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/top/iryojigyoresult/